日付:2011/01/02
社長挨拶
タイトル:花まつ物語2 ┃ (2)大阪の叔父と母きみ子
吉章は高校卒業後、四年間、大阪の京阪沿線の香里園で、青果の小売業を営む叔父のもとに就職した。就職とはいっても、昔型の住み込みで働く丁稚奉公のスタイルだった。

叔父の店は淀屋青果店といい、京阪線一番の超繁盛店だった。
お世話になった叔父は、吉章の母、きみ子の弟で、隆盛したバナナ問屋の跡取長男として生まれた人である。家業のバナナ問屋は、きみ子が高校生、叔父が中学生の頃に戦争によってバナナが輸入できなくなり急速に傾いた。

叔父は銭湯にいった時のエピソードを吉章に話してくれている。
「銭湯の閉店時間に合わせて行き、銭湯の電気が消えるころに銭湯のおじさんに頼んでいれてもらっていた。銭湯のおじさんは、電気を消して僕を銭湯にいれてくれてくれる。なんでかわかるか?今まで家の商売は、人のうらやむような立派な成功をとげてきた。その商売が傾き、蔵の道具を売り、地面を切り売りし、庭の灯篭や石までも売りさばき、落ちぶれていく姿を人は手のひらを返すように後ろ指を指した。だから営業時間内に銭湯に行くことは出来なかったんだよ。」と叔父は話してくれた。
母、きみ子も吉章に同じような話をしたことがある。
吉章がまだ小学生の頃、母は涙声でこう話した。

「明日食べるお米がない時に、家の向かいの酒屋の娘、幼馴染のゆうこちゃんが、私にカレーライスを持ってきてくれた。そのカレーはとてもおいしかったけど、とてもしょっぱい味がした。ゆうこちゃんの優しさと、お家が傾いていく辛さの涙にあふれて食べたからなんだよ。」

バナナの涙・・・のエピソード。
きみ子はよく、八百屋さんへの配達や集金に吉章たちを車に乗せて連れて行った。母は決まって黒いバナナ、(売れ残りそうになっている)を必ず買った。
「どうしてお母さんは新しいバナナを買わないの?」
と聞くと、
「今にも捨てられそうになっているバナナを見るとかわいそうになって、買うんだよ。あなたたちが生まれるまではバナナを見るだけでも辛くなって、喉も通らなかった。お家はバナナで隆盛もしたけれど、輸入できなくなって廃れたから・・・。」
と涙ながらに話した。きみ子は黒いバナナを、ジュースなどにして吉章たち5人兄弟によく食べさせてくれた。
きみ子の誇りのひとつは、隆盛した家系に生まれ、小さい時から愛情深く、教養も身につけてくれた、祖父母だった。きみ子はよく、祖父母の話をしてくれた。

「子は宝と育ててくれた。だからあなたたちは宝なのよ。」
と話し、きみ子は、吉章たち5人の子供を愛情いっぱいに育ててくれた。

いま花の事業をしている吉章は、もしも花事業を失うと、花も見れなくなるかと思うと・・・母の無念さを感じ、自らを奮い立たせるのである。