日付:2011/01/05
社長挨拶
タイトル:花まつ物語2 ┃ (5)新しい出発
22歳になり、丁稚奉公の就業を始めて四年経った頃、富山に新しいショッピングセンターがオープンすることになった。
その出店を予定していたお花屋さんが事情があって辞退をされたと聞き、吉章は花の商売をしたいと考えた。吉章はとりあえず故郷に帰ることにした。
叔父は、通帳に月々二十万円ずつ刻印された1千万円の通帳をハンコつきで手渡してくれた。百万円たまった時、叔父は、
「百万円ためたら貯めた分の物の分別、分度がつくんやで。」
五百万円たまった時には、

「よっちゃんの友達は車買ってる友達もおるやろうな。けどな、五百万円分も物の分別、分度がつくんやで」
と励ましてくれた。一千万円たまった時には、
「よっちゃんの友達は、みんな大学行って、授業料や仕送りをいれると一千万円、親のすねをかじったことになる。
よっちゃんは、早く社会にでて早くスタートをきったのだから大学をでた友達よりも行って帰ってくるほど実力が上やで。」
と励ましてくれた。そして、

「この一千万円は、ワシにどなられて叱られて、休みも休まず辛抱してがんばった一千万円だから決して無駄遣いはできないわなぁ」
と付け加えた。4年間の辛抱と成し遂げた感激がこみあげた。

田舎のお母さん、お父さんを手助けしてこの一千万円を元手に盛りたててやれといって僕を送り出してくれた。
叔父が言った通り、一千万円のお金は手をつけることができなかった。  

故郷に帰り、新しいショッピングセンターで与えられた売り場は、間口二メートルほどの小さなスペースだった。スーパーの契約では、委託された花部門の商品を、ただそこに置いておくだけで良かったのだが、吉章にとってはそこが舞台であり、何とか自分自身の給料分くらいは稼ぎたいという思いがあった。
そこで吉章は、青果の対面販売の経験を生かして、お客さまに積極的に声をかけるようにし対面販売を行った。
「いらっしゃい。いらっしゃい。きょうはチューリップが安いですよ。」「バラとカスミソウが300円ですよ。」
と声を張り上げた。
呼び込みは4年間の経験が役立ちすぐに花売り場は注目を浴びた。するとそれまで素通りしていたお客さまが、うれしそうな顔をして集まってくるようになった。
また、茎の短い花は、市場では安値で取引されていることを知り、大量に仕入れて低価格で提供したところ、さらに気軽にお求めいただけるようになった。

売上は順調に伸び、おかげさまで創業から12年たった現在では、十七億円を計上。富山県下を中心に石川、福井、北陸三県に七十五店舗を擁するまでになった。

しかし、それまでの道のりは決して平坦ではなかった。中でも忘れることができない貴重な思い出がある。