日付:2011/01/06
社長挨拶
タイトル:花まつ物語2 ┃ (6)花が教えてくれたこと
商売を始めて三年目のことだった。創業時にスカウトし、頼みにしていた社員やパートの人たちが、次々と会社を去っていった。
わけを聞いてみたところ、私が彼らに対して、
「誰のおかげで仕事ができると思っているんだ。」
と言ったというのだ。

後に受講した経営セミナーによれば、それは経営者が絶対に口にしてはならない言葉の一つだということだった。

吉章はショックだった。一言もそのような言葉を口にしたことがなかったからだ。しかし、冷静に自分を振り返ってみると、何となく思い当たるふしもあった。

そのころは、店舗が増えていくのに思うように社員が集まらず、一人でたくさんの仕事を抱えて、朝から晩まで息せき切って働いていた。精神的にも余裕がなくなり、吉章はいつしか、社員を商売の道具のようにしか見られなくなっていた。

たとえ辞めた社員がいうような台詞を口にしていなかったとしても、言葉の節々や態度に、そのような気持ちが表れ、皆の心証を害していたのかもしれない。そんな心の荒みを気付かせてくれたのが、花だった。

ある日、仕事を終えて帰宅してみると、玄関や食卓にさりげなく飾ってある花に目が留まった。店で余った花を、妻が持ち帰って飾ってくれたのだ。花は仕事で嫌というほど見ていたが、そのときの吉章の目には、何かまったく違うもののように映った。
心のゆとり、安らぎ、潤いなど、人間が忘れてはならない大切なことを語りかけてくれているような気がして、ハッとしたのだった。

その頃の吉章は、いつも目をギラつかせ、花を見れば
「これならきっと売れる。」
花の美しさの前に、
「原価がいくらで手に入る。」
といったことばかり考えていた。

荒んだ吉章の心は、花の本来の美しさや、初めて花を売ったときのお客さまの笑顔を忘れてしまっていたのだ。

これでは、社員を失っても仕方がなかった。吉章はもう一度原点に振り返り、何のために花を売っているのかを考えた。

頭に浮かぶのは、たくさんの家庭で花が飾られ花の周りで家族が楽しく食事をしたり、語り合ったりする風景だった。花を買っていただく中で、お客さまの心に安らぎや温かさ、幸せを提供したい。花を通じて人に幸せを提供したい。それが自分の願いだと気付いたのだった。


その想いから花生活提案企業のコンセプトが生まれたのだ。後に花生活創造企業の企業理念へと進化した。そして経営について何にも知らない自分の無知さを知り、商業界などの経営書を片っ端から読みあさった。

経営に対する勉強への渇望感が芽生え、地元の商工会議所や商業界セミナーなどにも積極的に参加するようになった。
商業界の北陸ゼミナールに参加した折、芝寿司の梶谷会長の講演を聞いた。それがきっかけとなり芝寿司さんの店長会議などを見学させてもらうことができた。

理念に基づいた運営に感動した。自分の悩んでいることが理想形、あるべき姿となって運営されていたのである。異業種から学びを得ること。先進企業から学ぶことの大切さを知ることができた。好奇心と探究心が次から次か湧いて出た。というより必要に迫られていた。